建築基準法 その1

物の建築基準に関しては大正8年にできた市街地建築物法がありましたが、昭和25年に現在の建築基準法は法制化されました。

市街地建築物法では認可または許可という用語を使用していましたが、建築基準法では確認という用語に変わっています。それでは許可制度と確認制度はどう違うのでしょうか。

一般的には許可制度は厳しく確認制度は厳しくないというイメージがあります。開発許可は都市計画法で定められた、市街化区域で1,000㎡以上(3大都市圏では500㎡)の土地を建築目的で区画・形質の変更を行うときには必要な許可で、許可を受けてからでないと建築確認を受け付けてもらえません。

確認制度は建築主事が建築基準法と照らし合わせて適合しているかどうかを確認する羈束(きそく)行為(自分の裁量で判断しない)といわれています。

しかし、現実にはどの建物をとっても同じ建物がないように、法律の読み方も拡張解釈・縮小解釈されて指導されることになります。そのため、実務的には、設計する過程で疑問が生じた部分はこれでOKかどうか質疑を出し前もって回答を得ることが通常なのです。そこでは、安全な建物造りという目的から考えるとこのように設計したといった、目的論的解釈で設計者は自分の考え方について、建築主事の合意(裁量)を迫っていくのです。それが設計者の能力のひとつとも受け取れます。そういった現場レベルでは、確認申請には裁量行為も少なくないと感じられます。法律の専門家からみても建築基準法は読み方が難しいといわれていますが、建物そのものは具象物ですが、形は千差万別なため、法律そのものは、抽象的な部分が入らざるを得ないからです。

しかし、最近では建築行政連絡会議という組織をつくり、特定行政庁と同一県内を業務区域とする指定確認検査機関が相互に連絡をとることにより、建築基準法の解釈や運用の取り扱いを統一して建築確認業務の公平性、透明性及び審査基準の明確化を図るようになってきましたので、設計者としては悩むことが少なくなったともいえます。

耐震偽装事件以来、建築基準法が改正され構造計算のダブルチェックなどが必要となりそれ以前と比較して確認申請での記載事項などがかなり多くなりました。

改正当初では、既製品の流しのトラップ(排水口)の構造の記載を求められたり、全ての材料の認定書を添付したりと書類作りだけで大変でしたが、最近では以前のような極端な指示は少なくなったものの、建築基準法とは無関係な仕上げ材や仕上げ方法が変わっただけでも訂正を求められたりします。

要するに確認申請をしたときに出した書類や図面と実際が同じでないとダメだということです。長期にわたる建築工事では途中で設計内容が変わることは、珍しくありませんが、最近では工事中に変更すること自体、困難だというのが実情です。

なぜなら、確認審査機関が構造計算のミスを見逃した場合は、設計者と共に共同責任を負わされるからです。しかし、1,000㎡程度の建物で10~15万円の確認申請手数料ですから、この手数料で億の金銭リスクを負うこと自体、無理があるように思えますが、いかがでしょうか?

姉歯事件以来、設計者は性悪説で見られるのです。私は、建築設計者はイイ人が多い業界と確信しているのですが・・・。

欧米では設計者の保険加入が義務付けられており、設計の瑕疵があった場合には設計者の責任で対処するのが通常です。日本では保険加入が義務付けられていません。確認検査機関云々というより、設計料のダンピングを防いで、設計者にもっと責任をもたせる方が建築主にとってもよい方法だと思います。