不動産取引時に必要とされる重要事項説明書や契約書にインスペクションが加わることに2018年の4月に施行されました。
大型のビル取引などでは、デュー・デリジェンスという物件の詳細調査が行われています。主な内容は①物的状況調査②法的調査③経済的状況調査で、不動産取引の際に手付金の授受が行われても通常1~3ヶ月程度の期間で買い手の要請と費用において行われ、問題等が発覚した場合は、買い主から契約解除や契約金額の減額が行われます。
この中でも①物的状況調査をエンジニアレポートといい専門家が調査報告を行ないます。エンジニアレポートは、コンクリート造などの建物について行われるものですが、戸建て住宅はホームインスペクションと呼ばれる簡易なものが米国ではほとんどの中古住宅の売買時に行われています。
ここで、インスペクションについて説明してみます。インスペクションとは文字通り検査のことですが、わが国でも新築時においては、一般的には中間検査、完成検査の2回が行われていますが、米国では州により多少の違いがあるものの、公的検査でも整地工事、基礎工事、駆体工事、電気関係、配管関係、消防関係などの多岐にわたる検査項目がインスペクターにより実施されます。 公的インスペクションはの最終検査に合格しないと、居住の許可証が交付されないことになるので、結果的に電気、水道、ガスが供給されないという仕組みになっています。当然、建築の検査済証がなければ融資は下りない、保険がかけられないということで、事実上インスペクションが不可欠な社会なのです。米国では増改築時にもインスペクションが義務づけられています。わが国でも、最近は検査済証がなければ、融資が下りないとう金融機関も出てきましたが、検査済証がなくとも登記はできるし、電気、水道、ガスも供給されるため非常に緩い基準といってよいのです。
今回、不動産業法の改正で重要事項説明の中で①中古住宅の媒介依頼時にインスペクション事業者の斡旋の可否ならびに意向があれば斡旋②仲介時に買主にインスペクションの結果を説明③契約時にインスペクションの結果を相互に書面で確認、という流れです。
中古住宅の取引件数はますます増加すると予測され、それに伴い住宅の品質に対する買主の意識も高まっていくと考えられ、インスペクションの潜在ニーズは大きく10年後には年間10~20万件の需要があると見込まれています。
インスペクションの現場検査は「既存住宅現況検査技術者」などに登録している建築士(現在1万人ほど登録)で、「既存住宅売買瑕疵保険」で1000万円程度の保証とセットにしたスキームが検討されています。
ホームインスペクションを行うことはよいことなのですが、それを売り主サイドで行うことを義務化することには疑問を感じます。本来インスペクションは買主側の負担で行うのが米国流です。また、インスペクションは目視による調査が一般的ですが、目視は簡易である反面、チェックできる範囲には限界があり、特に構造については必ずしも明らかにはならない点が多いのが現実です。構造面だけでなく、設備にしても目視による検査であり、ホントのところは分からないが、何もしていないよりかははるかにましだという、インスペクションにより得られる効果が重要なのだという、利用者の正しい理解を促進することもインスペクションを普及させるためには必要なことです。そして、費用は上がります、検査機器を併用したより信頼性の高い検査方法に対するニーズにも応えていく必要もあるでしょう。