空中権移転の活用法

今回はこだわってきました空中権の最後で、現実に活用するには?についてお話します。容積の移転が行えれば、不良債権の土地の処理を始め公共施設の建設など巾広く活用できるのです。その活用法の一部を以下に揚げてみます。

①虫食い地揚げ地の売却

都心部で歯抜けになった、地上げ途中で不良債権化した土地の容積の一部を売却する。売却分だけ安くすれば、土地は売却しやすくなる。

②都心住居の建て替え

都心に住み続けたいが防火地域のため木造では建て替えられない。建て替えるにしても資金がない人に余剰容積を売却して、その売却益を家を建て替え資金に充当する。

③神社・寺院の修復・建て替え

神社の境内地や寺院の墓地には容積が未使用のまま残っています。墓地の上空は将来的にも使用することがないので容積を全て売却し、その売却益で本殿の修復や建て替えを行う。

④マンションの大規模修繕

平成9年の建築基準法の改正でマンションの共用部分が容積から除外され、15年以上前のマンションでは5~10%位の余剰容積が生じています。その容積を売却して売却益で大規模修繕を行う。

⑤不良土地と借金返済

高値で購入した土地が値下がり借金だけ残った人は少なくありません。その土地の容積を全て売却して売却益を借入金の返済に充当し土地は駐車料金収益を返済に充てる。容積の売却先が隣地でマンションであればマンション用の敷地として固定資産税は1/6に減額される。

⑥公共施設の建設

公園や学校などの公共施設には空き地が多く容積が残っている。この容積を北側敷地に移転して、その売却益を施設建設に使う。

⑦歴史的建築物の修復・保存

アメリカの例と同じように歴史的建築物の余剰容積を売却して売却益を修復費用、保存費用に充てる(すでに東京駅で利用されています)。

⑧不良建物の資産対策

古いビルや古アパートは、現在の容積を充足していないものが多い。建て替えるには立ち退きが必要だが資金もない。そのような場合、余剰容積を売却して立ち退き資金に充当する。

⑨その他

日照地と日影地、平面地と斜面地、望地と裏地、水際地と裏地、高圧線下と線下外地など余剰容積を移転させることにより、新規の建築需要を掘り起こせるのではないでしょうか。

「空中権の売買価格はどう決まる」

空中権売買での売買価格は基本的には容積の送り地側の地価で決まるでしょう。

図の例で説明します。裏地のA地が坪単価2百万円、表地のB地が坪単価4百万円とする。A地の容積100%当りの坪単価は50万円だから容積160坪分では8千万円で売却するのが基本です。B地の容積100%当りの坪単価は100万円だから、本来なら160坪分の容積は1億6千万円です。しかし、その半額の8千万円で購入ことが可能なのです。もっとも現実には空中権売買も土地売買同様、売り手と買い手の交渉の中で決まります。いくらで購入すればB地にメリットがあるか、建設費を含めた検討が必要となります。

空中権1

空中権2

現在、政府が推し進めようとしている都市再生特別地区制度で一定地区の容積を上げるのでなく空中権の移転など容積を上げるなら下げるゾーンをつくるなど、特例容積率適用区域制度の考え方が都市の健全な考え方ではないでしょうか。