事業用定期借地権が使いやすくなっています

借地借家法の一部改正法が平成20年1月1日から施行され、同日から、それまでの事業用借地権に関する規定が変更されました。

 これまでは「事業用借地権」という条見出しの24条で規定されていましたが、改正後は「事業用定期借地権」という条見出しの23条で規定されています。

 現在の新たな借地契約では、旧借地契約での契約はほとんど見受けられなくほとんどすべて定期借地契約になっていると思われます

  定期借地権は、契約の更新が無く、契約上の存続期間の満了によって確定的に終了する借地権をいいますが、このうち、事業用・居住用を問わずに設定できるのが一般定期借地権で、専ら事業の用に供する建物を所有する目的で設定されるものが事業用借地権となっています。

3つの定期借地権
  一般定期借地権 建物譲渡特約付借地権 事業用借地権
存続期間 50年以上 30年以上 10年以上20年以下
目  的 制限なし 制限なし 事業用のみ
契約方式 公正証書等 定めなし 公正証書
契約の 更新 排除特約 可 拘束されない 規定の適用なし
特  約 建物の築造による存続期間の延長を排除 
建物買取請求権の排除
30年経過後建物を売却する旨を定める 左のいずれも適用なし
返  還 更地で返還が原則 建物を地主に譲渡 更地で返還
考えられる用地 住宅用地・堅固な建物の商業施設用地 商業用地
住宅用地
ロードサイド店舗用地

 ここで借地についておさらいをしておきますと、昔からの借地契約(新借地借家法が施行された平成4年8月以前のもの)における借地契約では、非堅固建物(木造など)では20年以上(期間の定めがなければ30年)の期間で、堅固建物(重量鉄骨造・コンクリート造など)では30年以上(期間の定めがなければ60年)の期間で設定しなければなりません。

 そして、期間が満了して更新する場合には非堅固建物(木造など)では20年以上(期間の定めがなければ20年)の期間で、堅固建物(重量鉄骨造・コンクリート造など)では30年以上(期間の定めがなければ30年)の契約で契約更新を行わなければならないのです。

 これらの期間以上であれば50年でも100年と何年で契約してもよいのですが、定められた期間以下で契約すると無効とされるため、期間が10年と記載されていた場合は、期限の定めのない契約とされ、非堅固建物では30年、堅固建物では60年となってしまいますので注意が必要です。

 借地で地代はもらっているが、契約書がないというケースも少なくありません。そのような場合は、建物の謄本をみて登記された年月を最初の契約日とし、木造など非堅固建物では、それから30年経った時に法廷更新され、、次の20年後にまた法廷更新され・・・という具合に勘定していき次の更新の期間が来たときにでも、更新料や新たな契約書作りの話を切り出すのがよいでしょう。更新時に更新料や地代の値上げの話をするのが一般的ですが、借地人との合意が得られなければ、地主サイドは地代の受け取りを拒否するのが一般的ですが、借地人も地代を支払わないと借地権の解約につながるため、地代を法務局に供託するという手段に出てしまいます。

 このようなことを地主さんは経験したり見聞きすることにより、一度貸したら二度と戻らない貸地とすることはありませんでした。

 ところが、期限のある借地契約制度が法的な裏づけをもって登場しました。それが定期借地権制度なのです。

この定期借地権制度ができたことにより、これまでは土地の所有者が土地活用を行う場合に、駐車場として利用するか、借入金などの資金を投入して建てて貸すかのどちらかしか土地の有効利用の方法はありませんでした。昔のように土地を貸したら二度と戻ってこないばかりか、少ない地代では貸しているメリットもありません。さらには、半分以上の権利が借地人に生じてしまうため、資産どころか負の資産化に転じてしまうという現実を見ているからです。

 しかし、定期借地権制度のおかげで建てて貸さなくても、将来返還が約束されている契約で土地を貸し収益を得ることができるようになったのです。土地の所有と利用の分離ができたのです。

 これは、ユーザー・土地所有者双方にメッリとがあり、ニーズにあった土地の利用法であったため、ロードサイドの量販店や飲食店などの店舗経営を目的として急激に利用されてきました。

 ところが、多額な費用が必要とされる土地取得コストの抑制、財務健全性の確保、地価下落リスクの回避といった理由から、民間企業が土地の保有・取得を回避する傾向が強まり、事業用借地権が土地を保有・取得せずに業務施設を確保する有力な手法として、創設当初は想定されなかった大規模商業施設、物流施設、工場などにも事業用定期借地権が活用されるようになりました。

 このような大型の施設では、借地期間が20年では建物コストが償却できにくいため、20年後には新たに10年以上の事業用借地の再契約を結ぶことになります。しかしその時点で、地主より再契約の拒絶があった場合には、建物を撤去しなければならないというリスクを常に抱えての事業展開でした。

国土交通省が平成15年度及び平成18年度に実施した「事業用借地権に関する活用実態調査」によれば、事業用借地権について改善すべき点として、「存続期間の上限を延長・撤廃して欲しい」または「借地期間に見合った建物償却を税制上可能にして欲しい」といった項目を挙げる事業者が多数に上る等、存続期間の上限の延長・撤廃に対するニーズが多数寄せられていました。

また、「規制改革・民間開放推進3か年計画」(平成18年3月31日閣議決定)においても、事業用定期借地権の存続期間の引上げについては、存続期間の上限を引き上げることについての弊害の有無を見極めるなどした上、その是非を検討することとされており、与党議員による検討の結果、存続期間の上限は現行の20年以下から50年未満に引き上げるべきであるとの結論が出されていました。

そのような背景から、借地借家法の一部改正法が平成20年1月1日から施行され、同日から、それまでの事業用借地権に関する規定が変更されました。
 

 今回の改正では、これまでの事業用借地権では存続期間の上限が20年であったものが、上限を50年未満まで引き上げられました。すなわち、事業用定期借地権は、10年以上50年未満の期間で設定できることとなりました。(期間50年以上の定期借地権は,一般定期借地権として設定することになるため不要です。)

 これからは、事業用定期借地権として、50年未満までの期間で、更新や建物買取請求権のない借地権を設定することが可能になりますので、特に大型施設を中心にこれまで以上に活用されるものと期待されます。
 なお、事業用定期借地権の設定は公正証書による契約でしなければならず、この点はこれまでと変わりがありません。また、改正法施行前に設定された事業用借地権については、従前の法律が適用されるものとされています。

 これまでの定期借地権の空白期間になっていました20年以上50年未満の期間が埋まったことで、より所有者・ユーザー双方のニーズに応じた期間の設定が可能になりました。借地人である事業者が借地上に建てる事業用建物は店舗が大多数を占めていますが、その法廷耐用年数は31~39年であり、これまでの事業用定期借地権の20年で解体すると一括償却はできるものの、当初より税法上のミスマッチが生じることはこれまでも幾度となく指摘されていた部分でした。

今後は税法上の償却期間と借地期間を合わすことも可能になりました