罹災証明の判定の考え方

地震が起きてしばらくは応急避難施設等に避難しますが、2~3週間すると住居を失ったか、被害が大きく、もとの住居に戻れない人の支援が必要になります。支援制度には給付・融資・減免・支給などがあります。

罹災証明1

しかし、これらの支援を受けるには罹災証明が必要になります。「罹災届」の受付や、「罹災証明」を出すための調査は主として市町村職員が被災した建物の損傷の度合いを資産価値的の視点から調査し行います。また、罹災証明は損害保険金の請求時にも役立ちます。

熊本地震の場合、約1ヵ月後に証明の受付業務に毎日90名、建物被害認定調査に160名が熊本市へ派遣されその業務に携わりました。住宅の全壊が写真で確認できる場合はその写真をもって申請を受け付けることが可能ですが、それ以外では建物の精細調査が必要となります。熊本地震では1ヶ月間で罹災証明の申請が約9万8千件ありましたが証明書の発行は2万8千件と3割弱で、2ヶ月以内での全ての発行を目指しますが、住民からは遅れに多くの不満がでました。全壊の写真が添付されてもそれが申請者の所有建物である確認がとれませんので、その確認が容易にできる方策があれば全壊建物の罹災証明の発行は早まるはずですが、今後の課題になるでしょう。

建物調査には内閣府から「災害に係る住家の被害認定基準」という指針がでており、その運用指針がどのようなものなのか知っておくとよいです

被害認定は「災害の被害認定基準」等に基づき、市町村が下表の①又は②のいずれかによって行います。

<災害に係る住家の被害認定基準運用指針>

罹災証明2

※傾斜による判定で1/20なら全壊になりますが、1/60以上1/20未満の場合は損害割合を15%とし、各部位による損害割合の合計をを加算して計算します。1/60未満の場合は各部位による損害割合を合計して計算します。

建物がほぼ倒壊してしまった状態での全壊は分かりやすいですが、目視調査で半壊なのか全壊なのか、半壊でも大きな半壊なのかそうでもないのかの判定は難しいため、運用指針で数値化できる仕組みになっています。その際に、家の傾きが明らかに1/20以上の傾き、躯体や基礎の損傷が 75%以上と分かる場合には全壊とされ詳細な調査は省かれます。家の傾きが1/20以上かどうかは、例えば120cmの下げ振りを垂らして、6cm以上の開きがあるかどうかを計測します。また、2cm以上あれば半壊の可能性があるため、屋根・外壁・基礎の各部位の調査を行ないます。これらの調査には2~3人の調査員で行い、一見全壊の建物では、3~15分、各部位の外観目視では8~30分、内部立ち入りだと40~90分というのが過去の実績値の平均時間です。

外観目視で分かる損壊面積で判定できない場合、③や④の判定では判定できない場合は、建物の屋根・外壁・基礎の部位ごとに調査を行う②の損害基準判定(経済的被害)で判定しますので、次に②の場合の具体的な調査方法及び判定方法を示します。この判定方法は専門家でなくともできますので、判定前の推測や判定に不満な場合に改めて再調査の依頼の可否の判断に役立ちます。

■地震による住家被害に係る調査の流れ

<第1次調査>

外観目視調査:外観から調査可能な部分を一見して全壊か否かを判定、傾斜と部位による判定

<第2次調査>

第1次調査での判定後、被災者からの申請があった場合に行い、目視調査及び内部立入調査を行なう。この場合も、一見して全壊か否かを判定、傾斜と部位による判定(被災者から再調査の依頼があった場合は依頼の内容を精査した上で、必要に応じて再調査を実施)

次回は②による住家全体の損害割合の算定方法の具体的な方法について説明します。