熊本地震から2ヵ月半が経ちましたが、復興も時間がかかりそうです。赤紙・黄紙・青紙を貼られた住民も赤紙は建物がダメということなのか、青紙は安全と考えてよいのかな度の不安を募らせています。今回はこの色紙について説明します。
建物については、地震発生から復興までの流れは下記のように定められています。
第1段階(発災直後の時期):応急危険度判定(余震等に対する安全性の調査)
第2段階(やや混乱の落ち着いた時期):被災度区分判定(被災度の調査および復旧の要否の判定)及び罹災証明のための被害調査
第3段階(安定時期):復旧計画および復旧工事
まず最初に行われるのが応急危険度判定で緊急を要するため震災直後から速やかに実施されますが、少なくとも数日間の大きな混乱が収まった時期からの実施になります。
応急危険度判定では、余震などによる被災建築物の倒壊、部材の落下などから生じる二次災害を防止し、住民の安全の確保を図るため、建築物の被害の状況を調査し、余震などによる二次災害発生の危険の程度を判定するものです。基本的には全ての建物について調査が行なわれます。今回の熊本地震のように余震が多い場合には特に有効と考えられます。
その判定結果は、建築物の見やすい場所に判定ステッカー(危険:赤/その建築物に立ち入ることは危険です。要注意:黄/立ち入りには十分注意してください。調査済:緑/その建築物は、使用可能です。)の色紙で表示され、居住者はもとより付近を通行する歩行者などに対してもその建築物の危険性について情報提供をすることとしています。
建物の構造体に損傷が見受けられない場合でも、瓦や外壁などの落下物の恐れがあり、二次的危険性がある場合に、通行人等の安全確保のため、危険(赤紙)と判断されることもあり所有者が戸惑う場面も熊本地震では紹介されています。
間違ってはいけないのが、これは罹災証明のための被害調査ではなく、また建築物が使用できるか否かを応急的に判定するもので、緑色のステッカーが貼られたからといって被災建築物の恒久的使用の可否(構造的に安全か、改修は必要かなど)等を判定するものではありません。
また、赤紙が貼られたからといって、後日、家屋の被害程度(全壊・半壊等)による罹災証明の申請にはなりませんので注意が必要です。
ただ、次の段階になるときの目安になるほか、自治体にも報告され、罹災証明の調査時の参考とされますので判定を受けておくことはマイナスにはなりません。
応急危険度判定には建築士で応急危険度判定士の資格を持った判定士が原則2人一組で行い一日で15件ほどの調査を行います。熊本地震では当初被害の大きかった地域では概ね危険:要注意:調査済=5:3:2でしたが、ほぼ終了した約5万棟では3:3:4ということになりました。
建物にはられた判定ステッカーは、通常の場合は、判定実施本部が応急危険度判定により用が足りたと判断した時点までは掲示が必要ですが、具体的に期間の定めはありませんので、不要になった時点で所有者・使用者が処分することになります。
次回は遅れで被災者を苛立たせている罹災証明について説明を行います。