電気を造るコストと環境問題

省エネ、CO2削減も、冬季オリンピックのせいか一時より声が聞こえなくなったように感じます。
 東京電力のホームページを見ていましたら、下記のようなデータが載っていました。1kWhの電力をつくるコストです。「太陽光を使用するとこんなにコストがかかぞ」と言わんばかりのデータです 
 環境を考えたら、発電するのに、有限資源でCO2を大量に出すの石炭・石油・天然ガスによる火力発電なんてもってのほか、環境破壊のうえ土建業界と政界がグルになっているダム(水力発電)も中止という世情です。そこで太陽電池が注目されていますが、火力発電の10倍ものコストがかります。もし、電力会社が太陽光発電だけで電力を供給するとすれば電気料金は10倍の値上げです。毎月の電気代が一般家庭でも何十万円です。
 【1kWhあたりの電源別発電コスト】

※原子力・火力・水力は、耐用年数40年・利用率80%(水力は45%)の値。
原子力・火力・水力 出典:総合資源エネルギー調査会電気事業分科会コスト等検討小委員会(2004年1月)
風力・太陽光 出典:総合資源エネルギー調査会新エネルギー部会報告書(2001年6月)

 政府が今国会に提出する「地球温暖化対策基本法(仮称)」で基本的施策の筆頭に原子力発電の推進があげられていることが分かりました(2月25日毎日新聞夕刊)。ダム建設反対!、CO2を排出する火力発電所建設反対!、太陽光発電で電気料金10倍反対!。オール電化住宅は賛成!。こうなると残るは原子力発電しか切り札はなくなります。CO2削減を推し進めれば推し進めるほど、原子力発電が浮上してくるのです。

 ちなみに電力1Kwh当たりのCO2排出量は、原子力22g、石炭975g、LPG 608g、石油742g、水力11gで水力がよいのですが、建設コストが高いため結果的にはガスの2倍近くの発電コストになっています。原子力発電はガスよりさらに15%ほど安くなっていますが、原子力は電力をあまり使用しない深夜でも絶え間なく発電し続けています。そのため、実際に使用している実質コストはガスを上回るため、深夜電力料金を昼間の1/2~1/3にして深夜の使用を促しているのです。その代表例が、深夜電力を使用した温水器エコキュートとなるわけです。

 原子力発電が高い割合を占める国では、原子力発電量が余剰となる夜間電力を使って揚水し昼間に放出する揚水発電や、ヨーロッパでは電力輸出入を活用して隣国と電力融通しているようです。電気の送電ロスが少なければ地球の裏と表で電力融通ができますが現在では難しい技術です。

 原子力発電でいつも問題になるのは、コストは安いが安全性はどうなんだ、廃棄物処理はどうするんだということでしょう。廃棄物処理に関しては外国に依存している核廃棄物の再処理を国内で行うようにしたり、再利用ができる原子力発電所を造るなどで対応していくようですが、事故に対する保険を受ける会社がないように、事故が起きたときの影響は計り知れないのも事実です。

 現在、世界的には二つの流れがあります。

 すなわちエネルギー源としての原子力の利用を削減・廃止していこうとするスウェーデン・ベルギー・ドイツの流れと、エネルギー源としての原子力の利用を今後も追求していこうとするアメリカ・フランス・日本・ロシア・中国の流れです。

 原子力発電は必要だが危険を伴うし、半永久的に発生する廃炉や放射性廃棄物の永続的な維持管理コストが不明で、将来にそれらのコストをつけ回しているとも言われているのが現状です。

 私は学生時代に海洋発電に興味がありました。 

 島国の特徴である入り江や湾を利用した潮力発電や波力発電など永久的に続く自然現象は日本にはピッタリだと思うのですが、現在は環境破壊などで付近住民の理解が得られる可能性が非常に低いということです。環境・人権には弱いですね。

 来月は、建築確認をとってマンションを建設したら、近隣住民から建築確認は違法だと認可した新宿区に対して裁判を起こし、最高裁で近隣住民が勝訴した「タヌキの森裁判」についてレポートしてみますので、楽しみにしていて下さい。