道路上の空中権を売却して財政難に対処する方法

国土交通省は50年余り経過した首都高速道路の改修費用約1兆円の捻出のため、高速道路の上部の空中件を売却し、その費用にあてる構想を発表した。

具体的には東京銀座付近の築地川を埋めて造った都心環状線で半地下になつている約1キロの道路でそこを人工地盤で蓋をして土地を作り出し、その空中権を周辺の古いビルに売却し、より高容積の高層ビルを建設して再開発にもつなぐという構想です。

空中件の売却は自新しいものではな<、東京駅の余つている容積率(空中権)700%分を丸ビルに売却し、改修費用約500億円の大半を賄つたなどいくつかの事例があります。

しかし、道路の上空の空中件となると同様にはいきません。道路は道路であつて敷地はないからです。建築基準法では建築物のある土地を敷地だと定義しています。道路には建築物は物理的に建てられないので建築基準法でいう敷地にはなりません。

そこで国主交通省が考えたのが、道路の上に人工的に土地を作れ1撒地になり、敷地になればその上に建物を建てられる権利が生じるので、その権利すなわち空中件を売却し、その敷地は公園などにすればよいとう手法です。

現在検討している半地下の高速道路なら、そこに蓋をすることにより地面のレベルで公園が作り出され環境にも寄与するし、周辺の古いビルに空中権を移転して容積率を上げれば、大型の建物を建設できるようにり、再開発も進み耐震的にも防災的にも安心安全な街づ<りに貢献するというストーリです。

確かに土地を作つてその上空の権利を売却するという発想はあるかもしれません。土地を新たに作る事例としては調整池に蓋をして土地を作り出すことはこれまでに横浜などで行われていますが、この場合は土地を掘削して調整池にして、その上に人工地盤をつ<ったわけで、建物の地下に調整池を作つたと同じと考えればおかしな話ではありません。

そのように考えると、川を埋め立て土地を作り出し公園にする例は全国に数多<あります。

使用していない公園の上の空中権を売却する例は米国には少な<ありません。公園の上の空中権を売却して博物館の改修を行つたり、学校の校庭の空中権を売却して学校建設の費用の一部にするなど、米国では多い事例です。

土地を新たに作つてそれを敷地として建物を建設することは問題はないと思われますが、その上の空中権を移転するとなると話は別です。

土地の上に建物を建てた場合、土地が何らかの事情でな<なつてしまった場合は(陥没したとか、沿岸や沿河川で津波や洪水で流されてしまったなど)、建物そのものもな<なってしまうので、権利関係での大きな問題にはなりません。しかし、空中権を移転後、土地がな<なつてしまつた場合はどう考えたらよいのでしょうか。

一般的に空中権移転を法的に担保する方法として地役権設定が行われます。移転される側の土地は承役地、移転した側の土地を受役地といいますが、承役地がな<なった場合、空中権はどうなるのでしょうか。

行政は建物を壊せとはいわないでしょうが、既存不適格建築となり、不動産価格は急落してしまうかもしれません。人工地盤の維持メンテナンスを受役地の土地所有者が行えばよいかもしれません。承役地のメンテナンスを怠ると空中権が)肖滅してしまうため、維持メンテナンスをせざるを得ないインセンティブが働<からです。

人工地盤を造つて空中権を移転する手法を、駅前のペディスリアンデッキで活用することも可能かもしれません。一般的にはペディスリアンデッキは鉄骨造の構築物ですが、人工地盤のような構築物にすれば敷地としての扱いになるのかもしれません。そうすると、構築物と人工地盤との違いを定義する嚇要になります。人工地盤を作り空中権を売却するといった錬金術は、道路の上、河川の上、線路の上など応用はさまざま考えられますが、容積率が上がれば高層建物が増えます。

地震の多いわが国では高層建物の良否が問われている現在、都市景観も含めて都市の価値ということを考えてい必要性が問われています。

次回は、空中権売買の先端のアメリカではどうなのかの解説してみましょう。