第1回 『見えないモノから見えるモノへ』見えるモノ文化がやってくる

『見えないモノから見えるモノへ』見えるモノ文化がやってくる

あけましておめでとうございます
今年はアメリカ大統領選挙、わが国では参議院の議員選挙がありますがどんな年になるのでしょうか。よい年になりますよう祈りましょう。

 「お化けはなぜ怖いのか?」という質問がありますが、分からないから、理解できないから、本能に刷り込まれている・・等々ネットで出てきます。 
 現代ではあらゆるものが技術の発達とともに、お化け同様一般の人には分からなくなり、理解もできなくなっています。毎日のように使用しているパソコンでさえ、どうして動いているのか、インターネットって何だろうか知っている人はほとんどいません。電話なら線がつながっているので、たどっていけば相手の電話にたどりつきます。しかし、インターネットはたどることは不可能に近いのです。
 余りにも複雑で理解不能の事柄に対して人はあきらめるか拒否反応を示すかどちらかでしょう。どちらにしても考えることが無くなるのです。考えても仕方がないからです。
 しかし、ヒトは見えるものから考えることが基本であることは現代でも同じです。見えることで理解し安心します。お化けと同じように見えないものへの不安がDNAに含まれているのかもしれません。
 そのため、目に見えないエネルギーをどのようにして自覚させるのかという命題に対して、省エネ、創エネ、蓄エネの見える化が推進されています。エネルギーの見える化を進めることはエネルギー政策に役立つからです。電気のように見えないものを見えるようにする技術は意外と難しいのです。蓄エネでも蓄電量をデジタルで見せるより、例えば風船のふくらみでの見せた方が創エネ意識は高まります。

 電気の見える化ではIH調理器も特徴的です。IH調理器は火災に対して安全で、調理も早く簡単といわれているにも関わらず、普及の伸び率が止まっているようにも思えますがどうしてでしょうか。炎が見えないため調理イメージがつかみにくいからなのです。更なるIH調理器の普及には熱の見える化なのです。ガスならその炎の強さを見れば熱加減がイメージできますがIHは分からないのです。そのため、電磁波が出ているときは調理面が赤くなるようになる製品が出ていますが、ガスの炎と比べたら雲泥の差です。そもそも熱くないのですから・・  
 そこで、如何にして熱の見える化をガスに近づけられるかが今後の開発の課題だと聞きました。
 一方、ガス会社はいかにして熱効率を高めるかに一生懸命です。東京ガスのエコジョーズの製品は高効率の器具ですが、高効率にするには炎は見えないくらい高燃焼させムダをなくすため、ガスの炎は見えにくい器具になります。赤い炎が見える場合は不完全燃焼している状態です。一方、ガス暖炉であえて炎が見えるように燃焼させ、視覚的に温かみや和みを伝える製品が好評だという話もあります。炎は電気では作ることが困難です。

 製品に効率を追求すればするほどヒトの意識や感覚から離れていきます。そのため、ハイテク(高度情報技術)が進めばハイタッチ(人間的な触れ合い)が求められ、ハイタッチがなければいつかはハイテクは拒絶されるという、十数年も前に提唱されてきたことを思い返せば、効率と非効率性は一見相反することのように思えますが、共存が必要なことがわかります。
 利便性が高ければ人は退化するのです。退化した分ほかで補わなければならないので、時間軸を考慮すれば何も変わらなかったかもしれません。さらに利便性の高いものの追求は結果として生産コストの安い国々との戦いになってしまいます。

 モノの見える化はハイテクの反面教師として必要なのです。たとえば私たちが小さい頃に付録の実験セットで楽しんだ「子供の科学」のような実験キットの再普及も見えるもの触れるものに対する感動を子供に与えるのには非常に良い商品だと思います。大人でも見えるものにこそ感動を覚えます。ハイテクや高効率だけでは人を感動させるようなモノは作れません。これからはストーリーを語れるモノづくりがブランドになっていくのではないでしょうか。ストーリーと効率化は相反しますが、我が国でも必要な技術になるはずです。
 ユートピアというのは不安のない世界だからこそ、見えるものへの安心感をつくることがこれからの時代です。コンピュータの普及が幸せにつながるかと思ったら、忙しくいつも時間に追われる時代になってしまった。効率化の追求で働く人が少なくてすむ時代。失業者の増大になりました。